□HAPPY MERRY BIRTHDAY TO YOU□


「さて、と」
 キッチンの片隅にあるウソップ工場の上であぐらを組んで、右手を顎に当てて首を傾げながらウソップは小さくつぶやいた。
 目の前の小さな流しでざーざー音を立てて食器を洗っている金髪の細身のコックの誕生日プレゼントを何とか考えなければならない。
 アラバスタで助けてもらった(?)恩はとりあえず空島で返したつもりだ。
 サンジもそのことをよくわかっているらしく、空島以降食卓にきのこが上ったことがない。嫌いなものを食べずに済むのは大変ありがたいことである。

「コックのほしがるものねぇ…」
 またもやウソップはつぶやいて更に傾げている首の角度を大きくした。
 手先が器用なウソップだから、木彫りのクンフージュゴンとかラパーンとかでもいいのだがそんなものをもらってもサンジが喜ぶとは微塵も思えない。
 サンジがもらって喜ぶといえば女の子からのプレゼントだ。
 一瞬自分が女装してサンジにプレゼントを渡す図をウソップは想像しかけ、ものすごく気持ち悪くなって真っ青の顔でぶんぶん頭を振ってそんな悪夢を払拭した。

 どうせならサンジに喜んでもらいたいとウソップは思う。せっかく自分が頭をひねって考えついたプレゼントなのだから相手には笑って受け取ってもらいたいものだと思うのだ。
 残念ながらウソップは男で、包丁や調味料や新鮮な食材を見抜く眼力を身につけているわけもなく、皿洗いをたまに交代券などはあまりにベタだ。というより絶対にプレゼントの選択肢の少ない他の男どもが既に作っているに違いない。
 アイディアが被ってサンジに苦笑されるのもいやだったのでウソップは更に何かないかと考えた。

「ほら長っ鼻。夜食だ、ありがたく食え」
 さらに頭を傾げていたウソップの前に、たった今出来上がったばかりだと思われるホットサンドイッチが突きつけられた。
 タバコを上向きに銜え、袖まくりをしたコックがにっと笑ってウソップを見下ろしている。
「ああ、ありがとな、サンジ」
「どういたしまして。てめーもそれ食ったらさっさと寝ろよ」
 ウソップが言うと、サンジは目を細めてにっこり笑い、くるりと振り返ってキッチンに戻ると、自分は明日の食事の仕込をし始めてしまった。この男は一体どれくらい眠っているのだろうとウソップは感心し、ホットサンドイッチを一口かじってまた感心した。トマトとチーズとハムの絶妙な組み合わせが非常にうまい。
 あまりにうまかったので急いで1切れを口に押し込むと、すばやく2切れ目に手を出してぱくりとかじりついた。
「……そうか!」
 ホットサンドイッチを口の端からぶらぶらさせながらウソップは突然立ち上がり、右手を左手にぽん、と打ちつけた。
「……なにかあったのか?」
 驚いたサンジがウソップを振り返るが、ウソップは何事もなかったかのように(本人的には)ものすごく自然に笑いながら手を振ってキッチンを出て行った。
 仕込を中断させられたサンジはそのウソップのよくわからない行動に首をひねりながらも、再び包丁を軽やかに動かしだした。

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 サンジの誕生日まで毎日更新しますです。

2004年2月25日



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