壓略(えんりゃく)の果て






無数に絡みつく蔓。
その一つ一つに意志があるかのように、服の隙間から入り込み、
しっとりと汗ばみ始めた素肌を這い回る。

「あっ・・・うぁ・・・」

しなやかで粘りのある蔓は的確に捕まえたものを翻弄していく。
肩まである黒髪が後になびき、細く白い首がさらけ出され、
その白い首にも、まさにその時を狙っていたかの様に、蔓がゆっくりと這い登り、
緩やかに巻きつく。
そして、さらに他の蔓が伸び、柔らかい耳へと絡まり、緩やかな愛撫を与える。
抑えようとしても熱い吐息が桜桃の唇から漏れる。
それをあざ笑うかの様に、蔓はゆっくりと熱い口内を蹂躙し、その吐息さえ奪う。

「うっ・・うふ・・・」

閉じられない唇から、飲み込む事が出来ない唾液が白磁の肌を濡らしていく。

『こんな・・・事になるんだったら、素直に討伐をしていればよかったですね』
頭の片隅で始めて後悔と言う文字が浮かぶが、
体中を這い回り、自身へと侵入した蔓により、意識が奪われていった。



討伐のために地上に降りて来ていた。
もちろん、捲廉大将とともに副官である自分も。
地上は久しぶりだった。
春たけなわのこの季節。
地上は花が咲き乱れ、心地よい風も吹いている。
実は、自分は、討伐よりもその自然を満喫したいがために地上に降りて来ていた。
戦いは捲廉に任せて。
敵は弱い。
自分の作戦は完璧に出来上がっている。
捲廉だからこそ、総てを任せても心配は要らない。
だから自分は討伐の間、この時期を楽しもうと思った。
すべてを捲廉に託し(押し付けるとも言う)、
自分は散策へと、討伐場所から程近い山へと入って行ったのだった。


そして、この樹をみつけた。

目の前に広がる紫。
濃厚な香。
圧倒的な光景に息を呑む。

「すごいですね、藤、ですか」

このような藤は初めてみた。
天界でも見たことの無いような、見事に咲き誇る藤の花。
しばしその樹に見惚れてしまう。

幹には苔が付き、その伸びた蔓はお互いに絡まり、太い枝をつくり、
縦横に広がり、周囲にある木々にもその蔓を絡ませて重い体を支えていた。
そして、その枝を隠すように花が咲き乱れている。

紫の、たわわに実る花。
周りの物を総て自らの物とし、貪欲に咲き誇る花は怪しく風に揺れていた。
はらはらとその花弁を散らし、足元は自らの花弁にて紫の敷布をつくり、
濃厚な香を辺りに漂わせる。
その美しさは天界にある総ての花をも凌駕していた。

魅入られたように見つめる天蓬に、異変は音も無く忍びよっていた。

枝を創っていた蔓がはらりとほどけ、本来の姿に戻った蔓に、意志が宿る。
音も無く動き始めた蔓は、その動きを花に、風に隠した。

そして・・・・。

ヒュルンっと妙な音がしたと思った途端、天蓬の華奢な手足に蔓が絡まる。
何?と思う間もなく一気に体を持ち上げられ、咲き乱れる藤の花の中へ引き込まれた。

「な、に?離せ!この!うっ、ぐっ・・・!」

逃れようと体を動かすが、ぐっと締め付ける蔓に呼吸さえ奪われそうになる。
いくつもの蔓が体にまとわり付き服の中へ進入していき、
邪魔とばかりに、軍服を引き裂いていく。
そして白磁の肌が晒される。
わずかに残った軍服を纏わせて。

蔓はその滑らかで吸い付くような肌を味わう様に、動く。
遠慮をしらない蔓は、天蓬の全身へと絡み付いていった。

「っ・・・、こ・・離せ・・・こ・・の・・っ、はぁ・・・く・・」

上半身に幾重にも絡まった蔓は、胸の飾りにも容赦のない刺激を与える。
飾りを挟み込むように、押しつぶすようにざらざらとした蔓は蠢き、
次第に飾りは尖りを見せ、赤く熟れた果実のようになっていく。
蔓はその時を待っていたかの様に、細く先を分かれさせ、その尖りに絡みつき、
ぐっと絞るように、摘み取るように締め付ける。
そのあまりにも強い刺激に天蓬の背中が弓のように反り返る。
ふわりと髪が後に流れ、細く白い首がさらけ出され、蔓が待ち構えたように絡み付く。

そして、胸の刺激とともに、ズボンの裾から侵入した蔓は、
まだ形をかえていない天蓬自身に巻きつき、ゆっくりと締め上げる。
その刺激に意志とは関係なく、自身はゆっくりと立ち上がり、雫を流しはじめる。
ズボンの中は窮屈だと言わんばかりに、器用に蔓はベルトを外し、
ズボンを取りさり、魅惑的な下半身を露わにする。
雫を流し立ち上がった自身へ、またも先を細くした蔓は、割れた先端から、
何者をも侵入した事のない場所に、その細く分かれた物をゆっくりと沈めていく。

「ぐっ・・・あぁ!!」

あまりの痛みに体は硬直し、見開いた目から涙が滴る。
紅潮したはずの体はその痛みから、急速に色を失う。
『いやだ!やめろ!』と言葉にしたいのだが、口内を犯されているために、
言葉を出す事もできない。
痛みに意識を飛ばしかけている天蓬を気にすることも無く、
脚に絡まった蔓はゆっくりと左右に脚を広げさせ、
秘められた蕾を露わにする。
天蓬自身から流れた雫を絡めとった蔓は、ゆっくりと閉じられた蕾へ侵入を始める。

「うぁ!あ・・・くっ・・・はっう・・・」

自身と蕾に侵入した蔓はゆっくりと抜き差しをはじめる。
樹の周囲には濡れた淫猥な音が響く。
そして、咲き乱れる花はその色を濃くし、香さえ強くなるようだった。

「・・・く・・あぁ・・あ、んん・・・・あ、うぅ・・・はぁ・・」

色を無くした体は、熱く燃える様な紅色に染まり、濡れた体から汗が、ぽたりと蔓へと落ちる。
体中の総てが熱く、逃げ出す事も拒否することも忘れ、意志をもぎ取られ、翻弄させられる。
ただ、体は快感を得ることのみとなっていく。

自らの体内に入り込んだ蔓が奥深くを叩く。

「ああ!」

その身を淫らに躍らせ、侵入していた蔓が自身から抜け出た瞬間、
白濁した液をその紫花の中へ吐き出した。

その瞬間、まるで歓喜の声を上げるかのように幹は揺れ、
巨大な幹の古い皮の一部が剥がれ落ち、その下から美しい新たな皮膚を纏った幹が姿を現す。

意識を無くし、肩で息をする天蓬に、またも、刺激を与え始める。
「っあ・・・は・・・ぅう・・・あ・・」
意識がないまま、口からはまたも熱い吐息が漏れ始める。
萎えた自身に絡みつき、無理やりに刺激をあたえ、白濁した液を出させようと蔓は動き始める。
その時。

ドン!ズギュン!

と耳をつんざく音が響き、紫花をばらばらと散らす。
幹の一部がかけるが、天蓬に絡まる蔓は動きを止めない。
その様子に天蓬の上官である捲廉は眉を寄せる。

「ち、だめか。じゃぁこれならどうだ?」

新たに榴弾を入れた銃を構えた捲廉は、再度、幹の中央をねらう。

ドン!

見事に樹の中央で炸裂した弾はその幹の中心を抉り取っていた。

ザワッと藤の木が揺れ、総ての花が音を立てて落ち始める。
そして、これまで蠢いていた蔓はやっとその動きを止めた。
天蓬を絡めたまま。
ばらばらと散る花の中、上半身は服の一部を纏っただけで、下半身は生まれたままの姿。
そして蔓は体を蹂躙した形のまま動きをやめていた。
あまりに魅惑的な姿にしばし呆然と見とれてしまう捲廉だったが、
はっと我に返り、天蓬に絡まる蔓をもぎ取っていく。

「うっ・・・」

体からずるりと抜け出る蔓に、かすかに声を立てるが、まだ意識は戻らない。
体中に付いた赤い跡に捲廉はその端正な顔を曇らせた。


「うん・・・あれ?ここ?」
見慣れた天井が目に入る。
「よ、やっと起きたか」
覆いかぶさるように捲廉がのぞきこんできた。
「あ・・・っと?」
まだ霞がかかったような感じではあるが、天蓬はこれまでの事を思い出した。

「討伐はどうなりました?」
「んなもの直ぐに終わったに決まっているだろう?」
「あぁそうですね。僕の作戦ですから」
「お前な〜。だからって討伐抜けてあんなとこで遊んでんなよ」
「はぁ、別に遊んでいたわけじゃないんですけど」

くしゃっと天蓬の髪をなでながら、ため息が出てしまう捲廉で。
「まぁ、仕方ないか、あれは特別なもんらしいから」
「あれ?」
「そう、あの藤。あれ、霊木ってやつらしい。生き物の精を吸い取って長生きしてたんだと」
「はぁ・・そうですか。霊木ですか。だから、嫌な感じがしなかったんですね」
「ま、そういうこと。それより、体どうだ?」
「まだ、ちょっとだるいですね」
「まぁ、だいぶ吸い取られたらしいからな。お前の精気」
かっと赤くなる天蓬に思わず、質の悪い笑顔が出る。
「俺が見つけた時もだいぶ気持ちよさそうだったし、俺よりいいかもだった?あの樹」
「知りません!」
顔を背ける天蓬に苦笑がもれる。
「ま、俺より良いわけないか、な?」
「当たり前です」
きっと視線を合わした天蓬の唇に口付ける。
「体力が戻ったら、また、俺のよさを認めさせてやるから」
「いえ、今、ください」
「何言っているんだ。そんな体でやれないだろ?」
「あの樹の感触が残っていて気持ちが悪いんです。それにあなただって僕のあの姿を見て
平気なわけないと思いますけど」
「そりゃそうだけど・・・」
「ですから、捲廉、今、してください」
「だけどよ・・」
「いいです、あなたが嫌なら他を探しますから」
「ちょい待ち!それはちがうだろ!」
「じゃあ、いいですよね、捲廉」
もう、しらねーぞ!
一度言い出したら聞かない天蓬に、捲廉はいつも負けてしまう。

甘い口付けを落とし、体を繋いでいった。
捲廉は、あの魅惑的な姿を思い浮かべて。
紫の花に浮かぶ白磁の裸身。
まるで、名画を思わせるような天蓬を・・・。





                                   
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