BIRTHDAY CARD 3
「…最初ははずしたか」
「まあ、悟浄の皆さんへの愛情ですよ。最初っから当てまくってるとどれだけたくさんの人が悟浄におごらなきゃならなくなるかわかりませんしv」
ぼそりとつぶやいた三蔵に八戒はにこにこと返事を返した。
「でも三蔵、何だかんだいって勝負の行方に興味があるんですね」
「…………………………………好き好んであのクソエロ河童におごってやる筋合いはないからな」
「あははは―、そうですねー。三蔵努力してましたもんねえ」
軽やかに笑う八戒を見て三蔵は絶対最強男は八戒だと八戒ファンに殺されそうな認識を新たにした(同時に、こんなはなしを平気で次々アップする管理人も命知らずだと珍しく慈悲心を持って思ってやった)
「……つぎはっっっ」
「そう怒鳴らなくてもいっぱいありますから。ほら、どうぞ、どれでもお好きなものを」
次に悟浄が八戒の手から引っ手繰ったのは、几帳面な字で丁寧に書かれたカードだった。美しく整ったその字は、普段お目にかかる機会がない。ということは、毎年なぜか巻き込まれている敵さんご一行の中の誰かだろうかと悟浄は思ったが、とりあえずやはり裏をかくというのは誰でも考えることだ。意表をついて悟空の字かもしれないが、あの脳味噌胃袋猿にこんな几帳面な根気があるとは思えないし、八戒の字とは明らかに違う。三蔵は墨を使うはずだし(この辺で認識がもう間違っているのだが)、今度のカードも悟浄は仕方なく中身をできるだけすばやく読んで、誰がどうなのか判断しようとすばやく目を走らせた。
『お誕生日おめでとうございます、悟浄さん』
…普通の書き出しだ。これは中身も少しは期待できそうだ、と悟浄は思った。素直に考えればあの美女八百鼡のものだというのが妥当だろう。
『毎年八戒さんに頼まれて、このカードをかいていますけれど、こんなチャンスを下さった八戒さんに感謝しています。そうでもなければ私はあなたにお誕生日おめでとうございます、をいう機会なんてありませんから。
紅い髪のあなたをはじめてみたときは正直とてもびっくりしました。紅孩児さま以外に紅い髪の妖怪がいるとは思ってもいなかったからです。もしかしたら紅孩児さまと何か関係があるのかもしれませんが、でも、あなたはあなたでしたね。
前に紅孩児さまのお誕生日を皆で祝ったことがあります。白くて甘いケーキを買って、ろうそくを立てて、紅孩児さまのために歌を歌って、ろうそくの炎を吹き消してもらったりしました。とてもなんだか幸せな気分になってきました。
ああ、このお方がこの世にうまれてきてくださった日が、今日という日なんだな、となんだか私までとてもとても嬉しくなってしまったのです。
もしかして、その日に紅孩児さまがお生まれではなかったら、また、私は全然別の運命をたどっていたのかもしれない。そのまま百眼魔王の慰み者になっていたかもしれないですし、紅孩児さまと出会うこともできず、ただ、マイナスの波動を受けて狂ってしまっていたかもしれません。
それくらい誕生日って重要な日だと思っています。
私は八戒さんがあなたを思うほどあなたを知っているわけではありませんから、あんまり大げさなことも大げさな言葉も差し上げられませんけれど。それでもあなたのためを思って一生懸命になっている八戒さんを見てると、とても胸のあたりがほわほわしてきてしまいます』
……そこまで読んで、悟浄はこのカードを書いた人物が激しい認識間違いをしていることを大声で主張したくなってしまった。どこをどうやったら胸がほわほわする行為だというのだろう。八戒が、(強制的に無理やり)悟浄のバースデーカードをそこらへんの知り合いに書かせていることを。
『悟浄さん、八戒さんがそれだけあなたのことを大切に思っているということを、あなたが一年に一度、ちゃんと実感できる日があって本当によかったですね。
私なんかより、八戒さんが一言言ってあげるほうがよほどあなたにとっての幸いなんでしょうけれど、でも字数も残り少なくなってきたことですし、最後に一言申し上げます。
お誕生日おめでとうございます。素直に、この言葉を受け取ってください』
…………………思わずありがとう、といって素直にぺこりと頭を下げたくなるくらい素直でまっすぐでかわいらしいその文章を書いた人物の名前を悟浄は八戒に告げ、そして見事――――――今日も、玉砕した。
Q2 さて、上の文章を書いた人は一体誰でしょう?
→答えは最終日。
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