□HAPPY MERRY BIRTHDAY TO YOU□


 ウソップが変な笑顔でキッチンを出て行ったため、一人残されたサンジはリズミカルにキャベツを刻みながら考えた。
 生でサラダにするのなら、食べる直前に刻むのだが、今回はスープで煮込む予定だから今切り刻んでいるわけである。

 明日は自分の誕生日だ。

 バラティエでいた頃は、誕生日のためのディナーを作るということは日常茶飯事だった。
 お客様のそれぞれの誕生日に対する思い入れをうまく聞き出し、さりげなくそれを取り入れたコース料理を考えるのをサンジは大変得意にしていた。特に女性客対象の場合その腕は更に磨きがかかり、そんな彼女達に心から笑って「ありがとう」と言われることがサンジは好きだった。

 しかし、その対象が自分となった場合、どうすればいいのかサンジにはまったくわからず、とりあえず彼は途方にくれていた。

 自分がこの世に生を受けた日を祝える資格が今あるということは、食料を全部自分に渡し、代わりに自分の足を食って生き延びたあの男がいたからということである。
 笑って、オールブルーに向かって自分の背中を蹴り飛ばしたあの男がいなければ、間違いなく自分はあそこで白骨死体となり、頭蓋骨をカモメの巣にされていたことだろう。

 ルフィは、ご馳走をつくるようにと自分に命令した。
 それならルフィが喜ぶような肉満載の料理を作ればいいのだろうが、なんとなくそれでは悔しいような気がサンジにはした。
 「ご馳走」のアイディアが浮かばない料理人などは料理人というべきではない。
 誰から見ても「サンジの誕生日だな」と思わせるメニューを考案すべきであって、ぐちゃぐちゃと考え込んでいる場合ではないということもわかっている。

 自分を祝うためではなく、自分を祝ってくれる人たちのため、全員を唸らせるような料理を出したいとサンジは考え、寸胴の中、煮立ってきたブイヨンに大量のキャベツを放り込んで、レードルでぐるりとそれをかき回した。

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 サンジの誕生日まで毎日更新しますです。

2004年3月1日



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