Birthday Card 4
やたらと山道を歩きまわって正直悟浄はくたくたにくたびれていた。
ようやく目の前に「山猫軒」という札の出た、白い瀬戸の煉瓦で組まれた玄関を発見したと思ったら、とっくに日は暮れていたのだ。
八戒はそこに当然ついてくるとして、ナゼだか無理矢理に連れまわされている三蔵の機嫌は奈落の底を突っ走っている。
悟浄だってこんなことせずに町の宿屋でぐっすりと休みたいのだ。
いや、町の宿屋で八戒と二人で(以下中断)
「無事に辿りつけておめでとうございます。悟浄」
八戒が再びカードの束を手にして悟浄のところへやってきた。
「いやあ、この辺は実際すごい山ですからね。あんまり山がすごいので、白熊のような犬が2匹、目を回して倒れたという伝説が残ってるくらいです」
…そのエピソードはどこから拾ってきたんだとか、テレビのサバイバル番組か何かの司会進行かよと突っ込みたい気分はやまやまだが、悟浄は力なくその束の中から無造作にカードを抜き出した。
こんどのカードはやけに硬い。素材にも個性が出たのかと悟浄はそのカードをひっくり返したりすかしてみたりしてみた。
どうも材質はガラスらしい。ガラスとしてはそれなりに薄いが、強度を保っている辺り何らかの特殊な処理を施したものかもしれない。
こんなことをできるのはあの男しかいないだろう、と悟浄は当たりをつけた。誰か一人でも当てておかないと大変なことになる。
「それですね。じゃあ、中身を確認してその通りに行動してくださいねv」
八戒に言われて悟浄はその中身を読んだ。
そのガラスのカードには金色の文字でこう書かれていた。
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」