Birthday Card 4
「あーあー、こいつはどうだ、やっぱり世の中はちっともうまくできていやしねぇ」
こめかみに血管を浮き上がらせて恐ろしく低い声で三蔵は言った。
そんなことは悟浄にだってよくわかっている。高級そうなそのレストランの白い瀬戸でできた門をくぐれば、都合よく「お入りください」というカードだ。
本当にこれは打ち合わせも何もナシでかかれたカードなのかと2枚目にして既に悟浄は頭を抱えたくなってきた。
無言でじろりと悟空をにらみ、その点を正そうとしたが悟空は両腕を大げさに振って何も言わずに、いやいえずにそれを全身で否定していた。
「いやあ、ここまでたどり着くのに難儀していましたが、いいこともあるものですねえ。ここは料理店だそうですけれど、ただでごちそうするんですよ」
「………どこをどうとったらそー言う結論になるのかこの悟浄さんにもよーーーーくわかるように説明してくれよ」
にこにこと足取り軽く玄関ホールを歩いていく八戒に悟浄はそう言った。不思議そうな顔をして八戒が振り向く。
「だって”決してご遠慮はありません”なんてかいてるじゃないですか。普通言いませんよそんなこと」
そうだろうか
という巨大な疑問が八戒以外のメンバーには共通して沸き起こった。しかし、そんな感慨にふける余裕もなく悟浄は八戒にまたカードの束を突きつけられる。
「ちゃんとカードの言うとおりしたら、誰がどれを書いたのか当てやすいでしょう?悟浄、次のカードをどうぞ」
悟浄が無言でとったカードは、先ほどのカードとよく似ていた。やはりガラスでできており、金色の文字でこう書かれている。
「とくに紅い髪や紅い瞳の方は、大歓迎いたします」
「へー、よかったじゃん、悟浄大歓迎だってさ」
ほぼ棒読みの台詞を悟空は吐き、悟浄は絶対これは何か謀って書いたに違いないと心の底から思った。