BIRTHDAY CARD 3




 自分の誕生日まで一週間を切った。

 毎年毎年八戒がくれるものといったらろくでもないものだ。
 どうやったらあんなものをあんなふうに集めることができるのかと毎年悟浄は心底不思議に思っていた。自分がやろうと思っても決してできるわけがない。

 大体誕生日なんてものを大げさに騒ぎ立てる理由が悟浄にはさっぱりわからない。

 自分を生んだ母親というものの顔を悟浄は知らないし、その責任の一端をになっている父親の顔もろくに知らない。

 禁忌の子供。

 人間と妖怪という種族を超えた性行為の結果生まれた子供。

 そもそも性行為が成立するという時点で種族にほとんど差などありえないはずなのに。
 外見は人間と変わらないから、人間の女の子と遊ぶときには悟浄は必ずコンドームをつけた。妖怪の女の子と遊ぶ時だってそうだ。

 避妊をちゃんと考えてくれてるのね、などという間違った賞賛の声を聞くたびに悟浄はあいまいな笑顔を返し、目の前の行為に没頭することだけを考えた。


 毎年毎年誕生日という日を悟浄に突きつける八戒の行為。
 嫌がらせ、といってしまえばそれまでなのだが、あの妙に天然なくせに変なところで他人に対して恐ろしく聡い碧の瞳の同居人は、本当にただ嫌がらせのためだけに毎年それを繰り返しているのだろうか。


 普通に暮らしていた日々の記憶はすぐに薄れる。
 一週間前、自分が何をしていたか、などということは思い出そうとしてもうまく思い出せない。

 しかし、何かのきっかけがあって、その日が何か特別なことがあった日であれば。一生強烈な記憶となって残っていることはしばしばだ。
 誕生日などその際たるもの。毎年毎年その日はくるのだ。1年の中でたった1日だけ訪れるその自分がこの世に生まれたという自分だけの特別な日。
 
 
 祝いたくもないと思っていたことが、八戒がくれるとんでもないバースデーカードによって薄らいでいることは確かなのだと、気づいたときに悟浄は愕然とした。










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