BIRTHDAY CARD 3
「いやー、今年もこの季節がやってきましたねえ」
刺客さんご一行を文字通り粉砕し、手をパンパン、とはたき終えた八戒がにっこり笑って悟浄を振り向いた。
「何のはなしかなー、あはははは」
かわいた笑いでごまかそうとする悟浄に極上の笑顔を向けて、八戒は、懐から(どうやって?)白い紙の束を取り出し、悟浄に向かって突きつけた。
「はい、悟浄。いちいち細かいルールはもう説明しませんけど、どれが、誰のだかちゃんと当ててくださいねv」
「…………………………はい」
小さく返事をして、肩をがっくり落として、悟浄はその目の前に突きつけられた紙の束を見てげんなりした笑顔を八戒に向けた。
「……なんか、多くない?」
「ええ、毎年少しすぎてつまりませんでしたからね。今年はどーんと出血大サービスですよv」
にこやかに、一点の曇りもない笑顔で八戒は悟浄に向けてそういった。
「…なーにがサービスだっつーの」
「悟空、何かいいましたか?」
「…ななななななんでもありませんっ」
慌ててあさっての方向を向き、口笛を吹きながら悟空はそそくさとその場を離れようとした。当然それは八戒にあっという間に襟首をつかまれ、未遂に終わるのだけれども。
「まあ、ほら、わかりやすそうなのからいってみてくださいよ。ほらこれ、めちゃくちゃわかりやすいですよ」
八戒が取り出したのは、黒々とした墨で立派な文字が書き付けられたカードだった。
これは、素直に考えれば三蔵筆のはずだが、そんなあからさまにわかるようなことをあの最高僧がしでかすとは思えない。しかし、3年目ともなると、更にその裏をかいて、実際に三蔵が書いたものかもしれないしー――
悟浄はできるだけ、文章を読まないでもそれが誰が書いたのかわかるよう努力しようと試みたが、それは所詮無駄な努力でしかなかった。仕方ないので、そこに書き付けられた文字を読んでみる。
『大好きな悟浄…』
一言目から全く読む気をなくしてその紙を思わず破り捨てそうになった悟浄はそんなことをしたらどんな目に合わされるかもわからないということを寸前で思い出し、仕方ないので続きをできるだけ速く読むことにした。
『今日というこの日に生まれてきてくれたことを天帝と観世音菩薩、次郎神と、三仏神、あとジーザス=クライストとアッラ―と仏陀と釈迦如来と大神オーディーンと、ゼウスと元始天尊と玉皇上帝と太上老君と…』
そのあとも延々とどこから取ってきたのかよくわからない神様っぽい名前が書き連ねられ、明らかに次数あわせで四苦八苦しました、と言うそのカードの結びを見た途端、悟浄は本気でそれをほおり出し、頭を抱えて座り込んだ。
『…感謝する。僕自身は無神論者だけれど、悟浄、きみという人物と出会えたことは思わずいもしない神に感謝したくなるくらい僕にとって重要で大切なことだ。愛してるよ。今度ぜひ二人っきりであって欲しい』
「……………………………書いた面子はっっっ」
怒りに打ち震える声を押し殺して悟浄はすごい形相で八戒を見た。
八戒が述べるその選択肢の中で悟浄が告げた名前は――――――――――――残念ながら外れていた。
Q1 さて、上の文章を書いた人は一体誰でしょう?
→答えは最終日。
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